消化器内科,外科,整形外科,内科,肛門内科
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胃とヘリコバクター ピロリ菌

胃とヘリコバクター ピロリ菌(以下H.ピロリ菌)

H.ピロリ菌とは

H.ピロリ菌(Helicobacter pylori)は胃潰瘍・胃癌などほとんどの胃疾患の原因になります。胃癌に関しては、原因の90%以上がH.ピロリ菌と言われています。
H.ピロリ菌感染者の80%は、5歳までに家庭内感染にて感染しています。
平成25年にH.ピロリ菌感染胃炎に対する除菌療法が保険適用になっています(平成25年以前は胃潰瘍のみが保険適用でした)。
またWHOは平成26年に、胃癌対策としてH.ピロリ菌に対するtest & treat(検査および除菌)の導入を検討するように勧告しています。

H.ピロリ菌と若年者(中高生を対象に)

生活環境の改善に伴い感染率は低下していますが、若年者の感染率は未だ数%~10%代です。
しかし若年者では胃痛などの有症状者が少ないため、胃カメラを施行しH.ピロリ菌検査を実施する機会がありません。
このためH.ピロリ菌に感染していても、胃痛などの症状発現時に検査を行うまで長らく放置されることが多いです。

H.ピロリ菌検査

H.ピロリ菌検査は、基本的には胃カメラ施行時に行います。胃カメラで胃癌の有無など胃内を観察し、この時に胃粘膜の一部を採取(生検)し検査する迅速ウレアーゼ試験で確認します。
しかし特に若年者では、胃カメラに対する抵抗感が強いです。また全国調査でも、15歳未満の胃癌症例はほとんど確認されていません。これらの理由から若年者には、自費検査になりますが胃カメラを施行しない尿素呼気試験でH.ピロリ菌検査を行います。
尿素呼気試験は、内服薬(ユービット)服用前後に呼気を採取し検査するだけの20分程で終了する負担の少ない検査です。
H.ピロリ菌検査には、他に尿中抗体検査などがあります。安価で検体採取が容易なことから大勢の人を対象としたスクリーニング検査には適していますが、精度が劣ります。当院では精度を最優先とし、信頼性の高い尿素呼気試験で検査を行います。

H.ピロリ菌の除菌

検査の結果、H.ピロリ菌の感染が確認されれば除菌を行います。除菌は内服薬を一週間服用していただきます。若年者でも、体重が35kg以上であれば除菌可能です。
健康保険を用いた通常の除菌は、一次除菌として胃薬+抗生剤2剤(クラリスロマイシンとアモキシシリン)を行い、一次除菌不成功時に二次除菌として抗生剤を変更した胃薬+抗生剤2剤(アモキシシリン+メトロニダゾール)を行います。
しかし自費診療となる若年者の場合は、一次除菌として通常二次除菌に用いられる胃薬+抗生剤2剤(アモキシシリン+メトロニダゾール)を使用します。
若年者を対象とした研究で、一次除菌・二次除菌での除菌率がそれぞれ60.5%・98.3%と優位な差がありましたが、副作用は同等であったとの報告があります。このことから自費診療での経費の軽減と、一度で除菌を成功させたいことから通常二次除菌に用いられる胃薬+抗生剤2剤(アモキシシリン+メトロニダゾール)での除菌を最初に行います。

H.ピロリ菌除菌後の判定

除菌のための内服薬の服用が終了した後、二ヶ月後をめどに除菌後の判定を行います。
判定はH.ピロリ菌検査時と同様に、ユービットを用いた尿素呼気試験で行います。
除菌の失敗が確認された時には、抗生剤を変更し二次除菌を行います。

H.ピロリ菌除菌の意義

H.ピロリ菌の検査と除菌の意義は、第一に胃癌発症リスクの軽減効果が大きいこと、第二に親に成る前に除菌を行うことは子の世代への感染予防の最も確実な手段だからです。

費用について

通常、胃カメラにて胃炎もしくは胃潰瘍を認めたH.ピロリ菌感染者に対しては、検査費用・除菌の費用は健康保険の対象になります。
しかし胃カメラを行わないでのH.ピロリ菌検査および除菌の費用は、自費診療となります。費用は以下の通りとなります。

H.ピロリ菌検査費用
ユービットを用いた尿素呼気試験
H.ピロリ菌検査; 6,600 円(消費税込み)
検査費用には、検査前後の診察費用も含まれます。

H.ピロリ菌除菌費用
胃薬+抗生剤2剤(アモキシシリン+メトロニダゾール)
H.ピロリ菌除菌費用; 7,000円前後(消費税込み)
除菌費用には、薬剤の服薬指導も含まれます。

最後に

旭川市でも公的負担によるH.ピロリ菌の検査が開始されていますが、20歳時を含む成人が対象です。
今後、旭川市においても中高生を対象としたH.ピロリ菌の検査が、公的負担にて早期に開始されることが望まれます。